
小野次郎さん
連続インタビュー
「主権者学」 概論

「主権者学」 ってなに?
元参議院議員で安全保障の専門家、現在は日本航空教育協会会長でもある 小野次郎さんは、「主権者学」を独自に提唱されています。
官僚そして政治家を、通算40年もやって来られた経験から、編み出された「主権者学」、っていったい、どんなものでしょ?
小野次郎さんにうかがいました。
これは難しいことではぜんぜんないんですよ。
主権者というのは、日本の在り方を、選挙を通して決める人たちなんですよね。
最近、政治に若者の意向を取り入れるために、投票権が18歳以上に引き下げられました。
大昔は25歳以上とか、戦後は20歳以上だったわけですけど、今は18歳になれば、主権者として、有権者権限を無条件、無制限に与えられます。
でもね、考えてみたら、会社に勤めたり、運転免許もらうときなんかにも、必ず新人研修期間があったり、教習所行ったりが、あるじゃないですか。
ところがこの、日本の在り方を決める有権者の、投票権については、仮免もなければ免許証もなく、誕生日が来ると、いきなり投票へ行くんですよ。いきなり。

おや。日本じゃ、そんなふうなんですか。
でね、学校で教わったり、大学に行って自分で勉強したことが、そのままピタッと現実の政治に、当てはまればそれでいいんだけど、まあ、法学部に行かない人も多わけだし、中学・高校で教わることも、足りないことがほとんどだから、だから何の基準もわからないまま、ただ投票する、ってことになりかねないんです。
その時その時のマスコミの報道見て、投票日の朝の新聞見て、これでどうかな、って投票したり。印象で決めるとか。これもまた危ないわけですよ。
国の直近の一か月間や、その年の流れだけや、勢いだけで、Yes or Noをやってたんじゃ、正しい判断はできませんよ。
はい、それじゃ困りますね。
そこで、もっとベーシックな、日本の政治を形作っている、こんなエレメントがありますよと、まあ、ちょうどレストランのメニューみたいに書き出して、並べてみてね、有権者にはそこを参考にして、選んでもらうようにしようと考えたんです。
そのほうが選ぶとき、考えるときに、客観的になれるんじゃないかと思うんです。
だからね、エレメントの一個一個はべつに新しいことではないんです。
だけど、並べてみるとこれだけのメニューがあってね、そこをわかった上で選ぶのが、有権者ですよと、示していくのが、私が提唱する「主権者学」ということになるんです。
なるほどぉ。そのメニューには、どんなのがありますか?


次へ、挙げてみましょう。
Ⅰ日本の政治の骨格
1選挙:(小)選挙区と比例区
一票の格差(選挙区割り)
政治家(候補者)の生い立ち
世襲政治家
政治塾・公募の仕組み
公認と推薦 無所属
選挙資金・供託金
選挙運動・選挙違反
自民党総裁選(公選法以外の選挙)
2国会と内閣:国会会期制 一議案一会期制
議員運営委員会 予算委員会
党首討論
証人喚問 国政調査権
内閣と与党の力関係
解散・総選挙、「政局」とは?
3政治家と政党:国会質問と政府答弁
議員立法
日常的政治活動
後援会
政治資金と政治献金
政治資金パーティ
政治資金収支報告
政党組織(国対、政調、全国組織)
党内の派閥
与党と野党 連立与党
党地方組織(都連・県連) 支部組織
野党の離合集散
4「霞が関」との力関係:政府答弁作成
政党の政策を政府の施策にする、
法改正(閣法と議員立法)
予算獲得(個所付け)
業界代表(参議院全国比例)
5政治の中の皇室:憲法の定める天皇制
皇室と政府の日常的関係
女性天皇や女性皇族の問題
6マスコミ・報道:記者クラブ制
政治部記者
視聴率とスポンサー
世論調査
政権と報道の距離
7地方政治の現状:二元代表制
地方議員数と地方議員選挙
市町村合併と行政サービス
地域主権改革
道州制
地域政党と国政の関係
Ⅱ時局課題

という具合に、小項目を並べてみました。
これまでの「公民科」よりも、実践的になりますよ。
「主権者学」という言葉は、ウィキペディアでも、その他の用語検索でも出てこない、未検出なんです。
項目一つ一つはすべて既成のものなんだけど、こういう纏まったメニューになっているものはない。
有権者にとって必要な、実践的な、知識領域なんですよね、「主権者学」は。
僕のこれまで40年に及ぶ行政官や、総理秘書官、衆参両議院での国会議員の経験を生かして、普及につとめますよ。
さて、では、最初の項目のところを、まずは話してあげましょうか?

小野次郎氏プロフィール
1953年生まれ 東大法学部卒業後、警察庁入庁。茨城県警、外務省在フランス大使館一等書記官、北海道警察、鹿児島県警本部長、警視庁暴力団対策第一課長等を経て、内閣総理大臣秘書官(小泉内閣)。2005年、自民党公認で衆議院議員初当選(比例南関東ブロック)。2010年自民党を離党、みんなの党に加わり同党公認で参議院議員当選(全国比例)。結いの党、維新の党を経て、民進党結成に伴い副代表。2016年まで参議院議員を務め、現在は一般社団法人・日本企業危機管理協会 会長 等の役職にある。