森づくり
寄り道して 見つけたもの
最初にワタシらは、大崎 映晋(えいしん)さんのことを知ろうと思いました。
成田さんのダイビングの、師匠にあたる方のことを。
成田さんの書架には、大崎さんに関する書物が何冊もあるそうです。
それをお借りして、まずは読んでみよう。
そう思いたって出向くことにしました。
ところが、途中で、ワタシらはつい寄り道をしてしまったのです。
下の写真にある、階段を上って、青い海をちょい眺めていきたくなったもので。
400段あるこの階段をつくったのは、成田さんと、成田さんが理事長をしている、あわ財団のみなさんです。
そして上りきった先には、安房(あわ)の森が広がっていて、その中に一か所、ひとが憩うための、天空テラスがつくられています。
前回成田さんに、子どもたちへのメッセージを語ってもらった場所です。
そこにから海を眺めて、それから行くつもりでした。
しかしですね、階段を上りきる途中の、脇道に、工事中の施設を見つけまして。
なんだろ、これは、と足が止まりました。
この作業風景は、あわ財団の仕事に違いないのです。
ただ、なんのための建造物かな?
残念ながら辺りに作業員はいません。
その時にふっと、ワタシらに思い出てきた事がありました。それは前に、成田さんの仲間からきいた話でした。
海と、森のつながりについての話でした。
写真に撮った作りかけの施設は、その、思い出てきた話にきっと関連しているはずだし、成田さんの活動そのものが、直結しているはずだし、このさい、その海と森の話を、ワタシらはここへ記しておこうと思うのです。以下へ。
大崎さんの書籍をひらく前に。
海と森のつながり
成田さんと、あわ財団の仲間たちは、海に生きるひとです。
だからこそ、森づくりに力を注いできました。
それは、なぜか……
森の木々が伐採されると、雨が、保水力を失ったその山肌を侵食して、地滑りが発生したりします。
また、地滑りを起こさないにしても、森のない山に降った雨は、表土を削りながら、流れ落ちてゆくだけです。
でも、そこに森があったらば。
森に降った雨は、すぐには流れ下ってはゆかず、森の足元に広がる葉っぱや腐葉土や、昆虫の死骸などの内に、蓄えられます。
そして、その蓄えられた時間のなかで、栄養分が雨水に溶け出し、溶け込み、それからゆっくりと川や海へと流れゆきます。
そのようにして海へいたった栄養分を、植物プランクトンや海藻などが利用して育ちます。
そして次には、その植物プランクトンを動物プランクトンが食べて、さらに動物プランクトンを、魚が食べて、という食物連鎖が生まれ、自然のサイクルが維持されます。
であるから、海にはかならず森が必要で、手入れはちゃんとしなければならず、成田さんと仲間たちは、森を守っていくのです。
里海(さとうみ)を保全する
たとえば一つの地図を見ても、茶色くぬられた陸の部分と、青くぬられた海の部分の、そのあわいに、里海があることは描かれていないでしょ。
でも実は、海と陸とのあいだには、里海があるんですね。
そこは陸でいう里山と同じで、ひとと自然とが共生する場所だから、しっかり保全しなければならないんだそうです。
こども嵐土とは違って、日本国は人口も多く沿岸には工場も多く、生活排水もずっと多いから、注意がより必要なのでしょう。
陸から生活排水がどっと海に流れ込むと、栄養分が無意味に、多量に、海にあふれます。
すると植物プランクトンが大量発生します。それが赤潮で、それらは動物プランクトンの餌にはならず、漂いながら枯死して、海底に沈みます。
沈んだものは普通、微生物によって分解されるのですが、その時に、海中の酸素をものすごく消費するため、海の生物たちを、大いに苦しめて、魚たちの産卵場所も痛めてしまいます。
ひとの陸での生活の仕方が、海のストレスに直結します。
海も、海の生き物たちも、ことばを語りません。苦しい、痛い、と声を発しない。
成田さんたちはだから、陸に生きるひとたちに向けて、海の生き物たちの代弁もして、問題を周知させながら、里海を守る活動をつづけるのです。
ときには海辺で拾った貝殻やガラスのかけら(それはビーチグラスといって、ガラス瓶類が割れたのが、波に洗われ、丸みを帯びています)、それらを利用した、ランプシェード作りをします。
地元の子どもたちや、観光で訪れたひとを対象に、講習会もひらきます。
そういうことをしつつ海の事情を、広くみなさんに伝えます。
以上が、海と森とのつながり、それから里海のことでした。
さて、もう一点、こども嵐土が直面している心配事も、ここに記させてください。
ものすごく多くのゴミが、プラスチックゴミが、こども嵐土と、そして周辺の島々に流れ着いています。
中国、日本、東南アジア、ヨーロッパにロシアに米国や南米からの、世界中のゴミが、南太平洋旋廻、と呼ばれる海流に乗ってやってくるのです。
困っていますよ。
クジラやウミガメが、レジ袋などを飲み込んで餓死する事故はあちこちで起こっているし。
プラスチックゴミが、太陽に焼かれて砕かれて、微小なマイクロプラスチックになることも、また恐ろしい。
ひとが使う水道水には、すでにマイクロプラスチックが含まれているんだとか。
プラスチックはどんなに細かくなろうと、海中の微生物によって分解されることがないんですね。ただただ数を増していくのみ。
このことが、こども嵐土の当面の一番の心配事なんです。
さて、次にこそ、成田さんの師匠である大崎映晋さんのことを、ワタシらは調べますよ。おたのしみに。